危険負担(きけんふたん)とは?

不動産取引において、「危険負担」は非常に重要な概念です。この用語は、契約締結後から引渡しまでの間に、当事者の責めに帰すことができない事由によって契約の目的物が滅失・損傷した場合、その損失をどちらが負担するかを定める法的概念を指します。

不動産取引では、契約締結から実際の引渡しまでに時間がかかることが多いため、この期間中に予期せぬ事態が発生する可能性があります。

例えば、台風で建物が倒壊したり、隣家の失火によって建物が類焼したりするケースが考えられます。このような場合、売主と買主のどちらが損失を負担するべきかが問題となります。

民法改正前は、不動産のような特定物の物権移転については、原則として買主が危険を負担すると定められていました(旧民法第534条第1項)。これは、契約締結後は買主が所有者としての地位に近い立場にあるという考えに基づいていました。しかし、この規定は公平性の観点から批判も多く、2020年4月1日の民法改正により削除されました。

現在の民法では、双務契約において一方の債務の履行が不可能となった場合、原則として債務者(売主)が危険を負担すべきとされています。つまり、売主が物件を引き渡せなくなった場合、買主は代金支払いを拒むことができます。これは、給付と反対給付の存続に関する相互関連性(存続上の牽連性)に基づいています。

しかし、実際の取引においては、当事者間の合意により危険負担の取り決めを行うことが一般的です。多くの売買契約書では、「本物件の引渡前に、天災地変その他売主または買主のいずれの責にも帰すことのできない事由によって本物件が毀損したときは、売主は、本物件を修復して買主に引き渡すものとする」といった特約を設けています。

さらに、修復が著しく困難で買主が購入の目的を達成できない場合には、買主に契約解除権を与える条項を追加することも多くなっています。

このように、危険負担の問題は法律の規定だけでなく、当事者間の合意によって柔軟に対応することが可能です。不動産取引に携わる際は、この概念を十分に理解し、適切な契約条項を設けることが重要です。予期せぬ事態に備えることで、取引の安全性と公平性を確保することができるでしょう。

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